なぜFOLBOTは「一生もの」なのか?折りたたみカヤック一筋50余年、フジタカヌーが守り続ける「モノづくり」の哲学

なぜFOLBOTは「一生もの」なのか?折りたたみカヤック一筋50余年、フジタカヌーが守り続ける「モノづくり」の哲学


 

京都府笠置町(かさぎちょう)に居を構える「フジタカヌー」。

 

ここは、FOLBOTの折りたたみ式カヤックのすべてが生み出されている、情熱と技術が結集した場所。

 

今回は、50年以上の歴史を誇り、折りたたみカヤック一筋で歩んできた「フジタカヌー」の舞台裏をご紹介します。


「フジタカヌー」の創業者と技術の歩み


 

創業者の藤田清氏(1930-2022)は、恩師である京都大学の高木公三郎教授との運命的な出会いを通じ、カヌーの魅力に目覚めました。

 

藤田氏は独立するまでの15年間、住友電気工業やヤマハ発動機、日本ビクターなど一流企業5社を渡り歩き、ゴムや合板、船舶理論、量産技術の研究に没頭。

 

この「カヌー国内留学」とも言える貴重な経験が、現在のフジタカヌーの高度な技術力の礎となっています。

 

現在は2代目が「フジタカヌー」の技術力とモノづくりへの熱い想いを受け継いでいます。

 


「フジタカヌー」とFOLBOTとの出会い

 

 

そんな「フジタカヌー」と「FOLBOT」との出会いは、さかのぼること2020年。


「FOLBOT」を始めることが決まり、カヤックの生産工場を探そうとしていた時、当時「FOLBOT」のデザイナーが愛用していたカヤックが「フジタカヌー」のものでした。


「フジタカヌー」のカヤックを使い込み、その魅力に惚れこんでいたデザイナー。


「FOLBOT」のブランドキーワードである「折り畳み」かつ「丁寧なモノづくり」を行っている生産工場はここしかない、と思った我々は、突然の電話アポで京都へ訪問。


「突然生産依頼とは何者?」といった様子で、最初は訝しんでいた「フジタカヌー」さんでしたが、2回目の訪問後、「FOLBOT」のカヤック生産を引き受けてくださることになりました。



あれから早5年。「FOLBOT」のカヤックは「フジタカヌー」のご協力があってこそ。

 

2つの新モデルカヤック「SNIPER」と「WATER ARMOR」の発売を記念して、今回はその生産舞台となる「フジタカヌー」のモノづくりの様子を覗いていきます。

 

妥協のない、モノづくり ーいいものを、ずっとー

 

職人技が光るフレーム生産の現場

 

工場の入口すぐの1階では、カヤックの骨組みとなるフレームの加工が行われています。

 

 

主に使用されるのはアルミパイプ。

 

一口にアルミといっても、実はいろいろな種類があります。

 

フレームの部位によってアルミを使い分けて加工していきます。

 

 

ちなみに、従来のアルミ素材に加え、新型モデル「SNIPER」には、軽量で、折れにくく弾性の強いグラスファイバーも部分的に採用されました


 

加工はパイプのカットから始まり、丁寧なバリ取り、そして繊細な曲げ加工が施されます。


 

ロットごとの微妙な違いを見極め、職人が調整しながら、長年の経験と技術で形にしていきます。


 

曲げられたパーツは、木製の専用器具に合わせ、設計通りに仕上がっているか厳密にチェック。



確認を終えるとフレームを繋ぎ合わせる工程へと移ります。

ここまででも熟練の技がちりばめられていました。

 


 

アルミフレームのほかにも、シートの背もたれやコーミング(コックピットの縁)部分に使用するプラスチックパーツも裁断・製造していきます。

 

こうしてカヤックのフレーム部分が出来上がっていきます。

 





浸水を防ぐ「溶着」の技術が光る~こだわりのロゴプリントも~


 

1階では、フレーム加工のほかに、カヤックのフレームを覆う「船体布」の裁断が行われています。

 

その裁断されたパーツをつなぎ合わせるのは3階です。


 

 

裁断されたとはいえ、布は3〜5メートルにも及ぶ長さで重さもあり、扱うのも重労働。

 

フロアではできるだけ扱いやすいような工夫が施されています。

 

 

船体布へのブランドロゴなどのプリントも、工場内でシルクスクリーンという技法を用いて一つひとつ丁寧に行われています。

 


さて、いよいよ布と布をつなぎあわせていきます。

 

 

水に触れるボトム部分は、縫製ではなく、高周波ウェルダーという機械を使用した生地を溶かしてつなげる「溶着」という手法が取られています。

 

これにより、針穴ができないため、水が侵入するのを防ぎます。

 





こうして完成したカヤックは、最終工程となる組み立て検品へ。

 

吹き抜け部分に設置されているのは、工場建設当時に先代が設計したワンオフのカヤック用ゴンドラ。

 

検品を終えたカヤックは、フレームと船体布を慣らしながら、このゴンドラの上で静かに出荷の時を待ちます。

 


永く使うため、あえての「縫製」を。一人一人に寄り添ったメンテナンスと修理サービス



 

「フジタカヌー」の製品には、「いいものを、末永く使ってほしい」という哲学が息づいています。

 

どんなに丈夫な素材を使用していたとしても、自然と対峙していくなかでどうしても船体布が薄くなって穴が開いたりと、修理が必要になることも。

 

そんな時のために、カヤックのデッキ(上部)とボトム(下部)の接合には、あえて「縫製」が用いられています。

 

これは、傷ついた部分だけを外して交換できるようにするための配慮があってのことです。

 

FOLBOTのカヤックを購入した場合、リペアキットも同梱しているため、小さな傷ならご自身で直すことも可能ですが、大きな傷ができた場合でも工場でパッチを当てるなどの修理が可能です。

 

修理方法もお客様のご希望に合わせてご提案・相談したうえで決定します。

 

工場内には社長の藤田さんが長年愛用し、何度もリペアと補強を繰り返しながら使い込んできたカヤックがあり、その耐久性と修理のしやすさを物語っていました。

 


 

カヤック一筋50余年の歴史ー貴重な資料と熱い想いー

 

 

2階には、先代が手掛けた貴重な木製フレームのカヤックなどの資料が保管されており、50余年、カヤック一筋で歩み続けた軌跡と熱い想いを辿ることができます。

 


「遊びカヌー発祥の地」として普及活動にも貢献

 

工場のすぐそばには、先代社長が立てた「遊びカヌー発祥の地」と記された石碑がある、関西のカヌーの聖地として知られる木津川(きづがわ)があります



 

この川で実際に試乗を繰り返しながら、新しいカヤックの開発が進められることも。

 

 

まさにカヌー・カヤックの生産拠点としてうってつけの場所でした。

 


木津川ではフジタカヌー主催のスクールも開かれており、フジタカヌーはウォーターアクティビティの普及活動も精力的に行っています。

 


 

 

いかがでしたか?

 

フジタカヌーは、使う人が長く愛用できるよう、一工程一工程に心を込め、一艘のカヤックを丁寧に生産しています。

 

単なる生産拠点ではなく、カヤックへの深い愛情、そのカヤックを渡す人への想いが形になる場所。そんな風に感じました。

 

フジタカヌーとFOLBOTは、今までもこれからも、みなさまに愛されるカヤックを作り続けていきます。